マイハニー
6割くらいの車が入っていて、真ん中より後ろに車を止めた。
カーステレオでサウンドを受信する。
映画は始まってちょっと経ったところのようだ。

上映はB級のパニックムービー。
バックの音楽が騒々しいほどに賑やかだ。

音量を調整するお兄ちゃんの指先を見つめる。
あまり今まで気にしたことなかったけど、きれいな手だと思った。
長く、細い指は白くて繊細で、暖かいってことを知っている。

あれ?指の関節の所がいくつか傷になっている。

じっと見て、思わずその傷に手を持っていき、触れた。


「何?」

「手、怪我してる」

「・・・ああ、これ?・・・大したことねーよ」


そしたら、今度は私の腕を掴んで

「オマエ、こんなに冷たくなってんじゃん」

と言った。
後部座席にあるシャツを取って

「これ着てろ」

なんてブカブカのダンガリーシャツを私に投げてよこす。
ふわりとお兄ちゃんの匂いが鼻をくすぐる。


< 88 / 200 >

この作品をシェア

pagetop