マイハニー
帰りの車中は静かだった。
FMから流れるDJの軽快なお喋りが、
この重たい空気の救いだった。
お兄ちゃんは何も話さず、運転に集中している。
私も窓の外に目をやるのだけど、何も頭に入ってこない。

信号で車が止まった。
膝に置いた私の手にお兄ちゃんの手が重なる。
・・・トクン・・・心臓が跳ねる。


「今日・・・つまんなかったか?」


心配そうに眉をひそめ、私の顔を覗き込む。


「ううん・・・楽しかったよ」

「そっか・・・よかった・・・」

「昨日のことも忘れていたし・・・あ、最後泣いちゃったけど」


私はそうだ、って思い出した。


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