アダルトチルドレン
喜代さんの席に私だけが着く

お店の中で私は喜代さんのいちばんのお気に入りという事はママも1番理解していた

「いらっしゃいませ。今日も逢えて嬉しいよ」

席に着くなり私は営業トークを放ち始めた

「嬉しいと言ってるわりには、今日でもうこんなに逢ってるのにまだ目を見て話してくれない」

喜代さんは不敵な笑みをして

私の顎をグイッと掴んで無理やり目を合わせようとした

え?なに?何なのこの人


私はびっくりして喜代さんの目を見ないで恐くて視線だけを下に向けた

3秒くらいそのままの状態が続いた

その後 やっと喜代さんは放してくれた

放心状態だったけどとっさに言葉を口にした

「ごめんなさい。ちゃんと人の目を見て話さないのは失礼だよね」

「いや、失礼だなんて思ってないよ。そのうち徐々に俺に慣れてくれればいいよ」

「…うん、そうだね」

喜代さんはウイスキーに手を延ばして言った

強引なんだか優しいんだか本当によくわかんない人

オトナの男の人はみんなこうなのかなぁ…



「それでもっと甘えればいいじゃん」

「じゃ、これからいっぱい甘える〜」

…いやだよ、私喜代さんの事好きでもないし、頼りたくないもん

なんて、言ったこととは裏腹のことを心の中で思った



< 24 / 86 >

この作品をシェア

pagetop