学舎ハーレム
「一本!

幸大君の勝ち!」


ギャラリーからは騒がしい声が響く。

「ガードした…のに。」

「落ちた木刀を見てみろよ。」

幸大は木刀を渚の首から離す。


「木刀は私がしっかり握って…

握って…

何だと!?」

渚の木刀は握られていた。

が、木刀は切断されていた。

「なんだ…この切り口は!?

まるで刃物!?」


「ガードは失敗し俺が一本入れた。


刃物を使ったと思うなら確かめて良いぞ?

どうせ剣道部からの借り物だからな。」

「いや…その必要はない。

木刀を切断するとほぼ同時に私の首に当てられたのだからな。

私の首に傷も打撲の痕さえもないのに…

疑えるわけが…」


ポタッ、

ポタポタ、

渚が涙をこぼす。


ザッ、

渚は膝をつく。


「うっ、


うあ…


うあああぁぁぁぁ!」

大声で泣く。


「さて、ギャラリーは帰れ!

写真を撮ろうとしたら眼球を潰すぞ!」

幸大はギャラリーを追い払う。


「私たちも離れてるね?」

皐が幸大にそう言って、麗美や朝日たちとともに離れる。


「幸大君、人払いありがとう。


皆も部室に戻って自主練してて。」

睦月が剣道部の部員に伝えた。


「うっ…

うっ…」

渚は嗚咽を洩らす。
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