1407号室においで



―――――――――



今日は兄らが珍しく付いてこなかった。



正直もうなにもかもどうでもいい。



14階の自分の部屋からは長いエレベーターをぼぅっとして過ごしていると、いつの間にかそろそろ一階だった。



―――――エレベーターが開いたその瞬間、帰りたくなった。




「おはよう、僕の愛しいサクヤ」




視界一面が真っ赤で、瞬間的に何かは分からなかったが、一個一個よく見たら、薔薇の花束だと分かった。



そして、気づかないほうが幸せだったことに気づいてしまった。





(これ、毎朝あるのか‥‥‥)




げんなりした。



俺の寿命が日々刻々と減っていく気がする。





「さ、サクヤにこの薔薇を渡したくって‥‥‥‥」





えへへと照れながら薔薇を差し出す様は、ある意味で凶器だ。人間凶器。



朝のゴミ出しに来た奥様達が、遠巻きに此方を見ている。



―――――なんです。その、面白そうな、悔しそうな‥‥‥いや、なんか無駄にはしゃいでる人とかなんなんすか。カメラ撮影禁止ですってば。



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