コイノユクエ
かすみ草
最近、私が考える事と言えば、美大生の彼の事。

頭の中を半分以上、独占 している。

あれから三日たつが彼とは会えていない。

「…ちゃん」
「姉ちゃん!」
私の耳元で一樹が怒鳴る。
私は不意をつかれてビクッとなる。

「なによ!ビックリするでしょ!」

「さっきから何回も呼んでるんすけど」

一樹は冷めた目で私を見る。

「あっ…ごめん。何?」

「もういい!焦げる!」

一樹は私からオタマを奪い取る。
昼食のカレーがマグマの如く煮えたぎっている。

「ったくよぉー何、ボーッとしてんだよ。カレーが食えなくなったらどうすんだよ」

一樹はブツブツ言いながらカレーをよそう。

「俺は昼から練習だよ。ただでさえ時間がないのにロスタイムだよ」

遅刻しそうなのを私のせいにしてカレーを掻き込む。
「お父さん。ご飯食べよ」
私は店内の掃除をしている父に声をかける。

日曜は定休日だ。
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