妻と愛人、どちらをとるべきか?
 
 子どもの将来の楽しみは、妻とも離婚せず彼女とも別れないでいれば失われる恐れもある。
 このとき、妻と別れなければ息子2人イコール200% > 彼女とは娘1人イコール100% という比較数値は存在しないし、息子と娘という差もないに等しい。
 多数決も成立しないし、天秤にも乗せられない。

 いや、ある意味では今の状態が天秤に乗ってちょうど釣り合っているのだ。
 双方の皿に乗っている存在が、あまりにかけがえのない大事な存在。
 ずしりと天秤にのしかかる重圧。
 釣り合っているからこそ、その重圧を知りながらも実感せずに済んでいた。
 それもそろそろ限界。

 天秤がどちらか一方に傾くか、双方の重さに耐えきれずに崩壊するか。
 どちらも惨劇だ。
 妻と彼女と子ども三人の、合計五人をそんな惨い状態にはできない。
 そのような現実にはとても耐えられない。
 
 
 ……そう、だからこの店に来たのだ。
 ショーケース内の商品を指差し、購入する物を決めた。
 耐えがたい現実を耐えるための道具。
『いらっしゃいませ』も言わない店のマスターは、ぶっきらぼうにこう言った。
「弾は何発いる?」
 何発?
 決まっている。
「六発」
 妻と彼女と子ども三人と、そして『私』の合計六人。

『私』は銃砲店を後にした。
 うん?
 なぜ銃を買ったかって?
 刃物じゃ、妻も彼女も子ども三人も、みんな痛がってかわいそうだから。
 


 ふふふ。



 END
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