私の中の子供達
「んん~?…平井さん、アルコールなスメルがするっす!」


出社早々、向かい側の席の島田に声を掛けられた。


スメル…?

…ああ臭いな。

ただでさえ鈍っている頭に、奴のグズグズで早口言葉みたいな日本語は、理解に時間がかかる。


「…うるひゃい」

「ろれつも怪しいっす」


くそう。無駄な会話をさせるんじゃない!


「あら、平井さんが?珍しいですね。」


隣の席の、芹沢女史からのお言葉だ。



「はは。学生時代の友達と久しぶりに会ったらつい、ね…」


何となくシャキッとしながら、聞かれてもいない嘘の言い訳をする俺。野郎と美人との対応には、無意識に差が出るものなのだ。


「ああ、なる程。たまにはそういうのもいいですよね」


サラリと肯定で受け流してくれる芹沢女史。


「ふーん、本当は若い女の子と飲んでたとかじゃないんですか~?」


…それに比べてコイツときたら。



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