私の中の子供達
「うわー、ワインだあ。何かわかんないけど絶対に美味いですコレ」


明らかにちょっと声が高くなっているピノ子。同じくテンションも上昇しているに違いない。


食器棚から、しばらく使われる事のなかったシャンパングラスを奥から出す。


「ドイツのアイスワインと、今評判のいいカヴァだってさ」

「へー」


返事に感情があまりこもっていない。おそらく脳みそが先走って「飲食モード」に切り替わっているのだろう。


「じゃ、揃った所で食べようか」

「大賛成です!」


席につき、注意を払いながらコルクをシュポン、と抜く。


グラスに注ぐと底から、綺麗で細かい泡が一直線に立ち上る。


ピノ子にグラスをひとつ手渡す。


「じゃ…なんだか気恥ずかしいけど、メリークリスマス!」

「くりすますー!」



グラスが高く控えめな音を立てた。


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