私の中の子供達
そんな俺をさて置き、島田とピノ子のやりとりは続く。


「ピノちゃん…平井さんへの賛辞は聞かなかった事にして、…恋愛て気分でするもんじゃないでしょ?こう、一目惚れとか、気が付けば好きでたまらないとかさぁ~」


「ま、そうなんですけど。恋愛カンコウ令というか…」

「は?」

「したくないから、そっちの感度低くしといてるんです」

「はぁ?低くって、人間てそんな器用なもんじゃないでしょ」

「そうなんですよねぇ…」


何という事だ。

島田の発言の方が至極まともに聞こえる。

これは初体験である。


「あのですね。私は不器用なので、恋愛中は恋愛しかできなくなるんです。で、今は別の事をしていたいので、ちょっとお預け中なんです」


「ようやく理解。で、も、恋は突然よ~。例えば俺みたくステキな男が目の前に現れた日には…」


一人頷きながら腕組みをする島田。

ピノ子は手にあるグラスをぐい、と傾け口に運ぶ。

おそらく島田の話は耳に入っていない。

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