私の中の子供達
俺の様子にすぐ気付いた彼女は、少し慌てている。


「いやっごめんなさい。私、人の顔と名前を覚えるのが苦手てで…新規なのに指名してくれたから、もしかしてどこかで会った事あったのかなって。」


彼女は先ほどとは違う、もっと自然な笑いを見せながら頭をぺちぺちと叩いている。…うっかりさんなのだろうか?


そして不審者扱いも困るのでそれらしく付け加えておく。


「いや、えーと知り合いの業者さんから教えて貰ったんだよ。あの…鈴木さんに。」


無難な名前にしておく。仮に覚えが無いにしても名前を覚えるのが不得意なら、記憶になくてもさほど不審がられない筈だ。


彼女はちょっと考えてから口を開く。


「あっ鈴木さん!元気ですかね?確か水道管の敷設にニカラグアに行っちゃいましたよねー。単身赴任だって嘆いてました。」


「ああ…そうだね」


いたのか…すまない。見知らぬ鈴木さんに謝る俺。


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