私の中の子供達
ショリショリショリ…


耳で感じるひやっと冷たい感覚に、やたら近くで聞こえるこの音。見えないだけに恐ろしく、体験した事の無いむずがゆさが襲う。


「なんかむずがゆいね。」

「あはは、みなさんそう仰います。慣れれば気持ちいいらしいですよ。」

「うーん、そんなもんかね。」

「らしいですよ。」

剃り終わった後に、少し湿ったガーゼみたいなもので拭いてくれている。


「はい、反対を向いて下さい。」


初めは視線が室内を向いていたのだが、体の向きを反転させると彼女の体が近くにある。…これはさらに恥ずかしくなってきたぞ。


「…ここにこんなオッサンが来るってやっぱり珍しいのかな?」

「いえ、そんな事ないですよ。おじさまは多いです。」

「そうか、こんな怪しいおっさんはお断りと言われたらどうしようかと思ったよ。」


恥ずかしいので口数多めになっているのが自分でわかった。

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