私の中の子供達
「…はい、これでおしまいです。結構溜まってましたね。ご無沙汰でした?」

「うーん、そうかな?」


この会話、何かが恥ずかしい。


両耳で天国を味わい、あっという間に30分コースは終わってしまった。


体を起こして帰る準備をしていると、彼女が名刺を差し出した。


「はい、遅くなっちゃいましたけど。良かったらまたよろしくお願いしますね。」

「おっ、ありがとう。」


ひときわ輝く今日1番の笑顔。営業スマイルだとわかっていてもやっぱり嬉しい。


受け取った名刺に目をやると、当然の様に店名と電話番号、彼女の名前が書いてあった。


えーと江崎さんの下の名前は…と、ん?あれ?肝心の場所は黒の油性マジックで塗りつぶされている。


「あの…これ…」


呆気に取られつつ彼女に聞いてみる。


「私、ファーストネームは好きな人以外には教えたくないんです。」


ハッキリとした強い口調に、それ以上何も言えなかった。


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