私の中の子供達
チン スカラララ


エレベーターのドアが緩やかに開き、俺が先に出た。エレベーターからビルの出口へ向かう。メインイベントの会場はすぐそこだ。


「じゃ、ありがとう。」

「こちらこそ、今日はありがとうございました。」


あの言葉を楽しみにしている事を悟られぬ様に、ドライ過ぎずウエット過ぎずを肝に命じ、つまりはさりげなく振る舞う。


俺は片手をあげて「じゃあ」のポーズをしてビルの外へ踏み出した。気分の高まりを感じ、世界はスローモーションである。


トクトク トク…

波打つ鼓動


「…いってらっしゃい。」



そうだ、これだ!間違いない!このトーンだ!!


俺は数メートル進んだ所で、思わず拳をギュッと握りしめた。

思わず叫びたい気持ちを落ち着かせながら、少しずつ冷えてきた空気を肩で切りながら歩き続ける。


多分俺は今、気持ち悪い位に顔がにやけていると思う。知り合いに会わない事を願いながら帰った。

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