私の中の子供達
江崎さんが歩き出し、玄関まで送ろうと部屋のドアを開けた時だった。


「あっ、そう言えばこの部屋は禁煙ですか?」


「そういう訳じゃないけど…吸うの?」

「はいはい、吸う人です」


手を上げる江崎さん。


「台所の換気扇の下でいいならどうぞ」


「本当ですか?じゃあ早速…」


台所を指差し、換気扇のスイッチを入れる俺。


「すいません」


バッグから煙草ケースを取り出す江崎さん。


「我慢してたの?」

「はい。部屋に灰皿が見当たらなかったし…」


「そっか。次からは勝手に吸ってていいよ」


「良かったあ」


にこりと柔らかく笑う江崎さんは、ゆらゆらと揺れる白い煙が良く似合っていた。


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