私の中の子供達
キッチンにあった布巾をひっつかみ、土鍋を運ぶ。


テーブルの上には深めの小鉢と箸、おたまを置く為の小皿が用意されていた。


いつもならば鍋に直接箸を突っ込み食べていたので、こんな風にきちんと並べられた皿に感動を覚えた。


「イス、どっちに座ればいいですか?」

「どっちでも構わないんだけど、じゃあこっちに」


俺がいつも座っていない方を勧める。


「はーい」


勧められるままに座るピノ子。この椅子が使われたのもいつ以来だったろう?



そんな事を思いながらも、視線は鍋に釘付けである。


「じゃ、食べようか」


布巾で土鍋の蓋を取ると熱々の湯気が立ち上り、俺の眼鏡がうっすらと曇る。


鍋には白菜、大根、人参、葱などたっぷりの野菜と鶏肉が入っていて、たまらなくいい匂いがした。


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