私の中の子供達
アツアツでほど良い噛みごたえのある鶏肉。噛む度にジワっと、淡白ながらもコクのある味が口に広がる。続けざまに汁をすする。


鳥と野菜の旨味が心地良いシンプルな塩味。お店で食べるような豪華な具や派手な旨さではないが、素朴でホッとする味だ。


俺の胃も、温かく滋味深いご馳走を熱烈歓迎しているようだった。


「はぁ~…うまい」


器をトン、と置いた所でピノ子と目が合う。


「ふふっ。ブンちゃんて本当、美味しそうに食べるんですね」

「よく言われる。でもこれはいい味つけだよ」

「よかった~」


小さく白い歯を覗かせて笑うピノ子。ぱくぱくと小さな口に放り込む姿も可愛らしい。


俺は遠慮なしにたらふく、美味しい鍋を頂いた。


< 75 / 134 >

この作品をシェア

pagetop