私の中の子供達
胃袋と心が満たされた俺は身支度を整える。


「俺、そろそろ出るけどピノ子は?」


ネクタイをいつものプレーンノットで縛りながら聞く。


「私、今日は仕事が休みなので、もう少しゆっくりさせてもらいます」


「そうか、じゃあ出る時鍵をかけるのだけ忘れないでね」


「はーい」


食後のお茶を啜っていたピノ子がコトン、とマグカップを置く。


「あ、ブンちゃんが出る時私が鍵かけますよ」

「助かるよ」


俺は腕時計をチラリと見て、玄関へ向かい靴を履く。


そこへピノ子がトコトコやって来る。



「いってらっしゃーい」


「お、おお!」



思わぬ一言に俄然やる気が出る。



上機嫌で会社へ向かう俺だった。



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