♂ vs ♀ ~続・男女寮戦争~《完》
隣に感じる瀬戸内の気配に、胸が苦しくなる。

あいつはただ前を見て、無表情で歩いていく。



こいつが、優しい言葉をかけてくれるなんて期待してない。

それでも、ずっとこいつの側にいたかった。



瀬戸内は足を止めて、あたしを見下ろす。

あたしも、無言で瀬戸内を見上げた。



まっすぐ見下ろす瞳に、あたしは口を開くことができない。

あたしは、やっぱりこの人が好きだ。



瀬戸内の顔が、涙でぼやけていく。

甘えたことは言いたくない。

こいつの前で、絶対泣きたくない。

あたしはうつむくと、傘を払いのけて雨の中に飛び込んだ。
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