♂ vs ♀ ~続・男女寮戦争~《完》
「あの…瀬戸内貴斗いますか?」

彼女は、消えそうな声で言う。

「えっ?」

彼女、瀬戸内の知り合いなの?

可愛い声で言われた名前に、胸がザワめく。

うるうるした目であたしを見上げる彼女に固まってしまった。



「瀬戸内なら…」

あたしのほうが、動揺してどうする?

あたしは視線をそらして、校舎のほうへ振り返る。

こっちへ歩いてくる瀬戸内の姿が見えた。



「…貴斗!」

さっきまでオドオドしていた彼女が、ご主人様が迎えにきた子犬みたいにニッコリ微笑む。

瀬戸内に手を振りながら、勢いよく彼のほうへ走り出した。
< 35 / 259 >

この作品をシェア

pagetop