NUDE〜彼女の心〜
俺にできることなんて何もない。
何かしてやりたいと、助けてやりたいなんて考えは俺の驕りだ。
あの日もそうだった。何もできないって、何の言葉もかけられないってわかっていながらノコノコ行って、手痛い目に遭ったんじゃないか。
もう忘れるって決めたんだ。俺には関係ないんだ。
俺はギュッと目をつむり、新聞を横に置いた。
それから少し温くなった缶ビールを開け、帰ってから仕上げるはずだった仕事を頭の中いっぱいに広げてわざと余計なことは考えないようにした。
−−−−…。
俺は…逃げたんだ。
未来で後悔したくないなんて言いながら、結局は見たくない現実を遠ざけた。
自分が傷つかないように、自分の良いように考えて終わらした。
でも……現実ってのはそう甘くはなく、逃げられないように出来てるもんだ−−。