GIFT
3
要はひとり、ぽつんと取り残されていた。
………なんだあいつは。
あまり表情が動かないのかと思えば、ふわりと笑う。
怖がらないから、自分のことを知らないのかと思えば、当たり前のように知っていた。
「…………矢野、麗………か」
ひとつ煙を吐き、短くなったタバコをコンクリートに押し付ける。
………変な奴…。
新しいタバコに火をつけた。
(……それにしても、その名前どっかで…)
そこまで考えて、不意に下からドアの開く音とともに声がした。
「要ー、いるか?」
ヤスの声が聞こえ、下を除きこむ。
「んー。ここー」
目が合い、苦笑された。
「まだ寝てたのか?」
「ん、………いや」
そこでふと気付いた。
………俺昼寝しに来たのに一睡もしてねぇじゃん。
さっきまで矢野がいたため寝れなかった。
まぁ理由は寒かったのもあるし、なんか隣に人がいると落ち着かない。
そこで言葉を切ったのを不思議に思ったのか、ヤスが怪訝そうに見上げてくる。
「……結局寝てねぇ。さっきまでなんか居たから」
そういうと、ヤスは何かを思い出したのか「あ」と声を出した。