アダムの林檎
1 禁断症状
人が騒がしく、慌ただしい喧騒が煩わしい。


空港の喫煙所で、なかなか気分が落ち着かず、珈琲を3杯もたいらげ、タバコ2箱に火をかけてしまった。


あれほど心がけていた喉を、最近は痛め続けている。


昨日の夜さえ飲み会に参加していたのに、もうこれが故郷での最後になる事がそう思わせるのか。


そんな事を考えてしまうくらい、流されてしまう人間なんだ。


僕は大学へ行くまでは地元に残ると決めていた。そして卒業後は地元を出て、もう二度と戻って来ない事を決めていた。


10時に空港と書かれたカレンダーにやっとバツ印を付けれたのは、今朝は8時の事だった。


そこまで悩むとは思っていなかったのだが、やはり決めていた事とは言え、断腸の思いを抱えるという機能は僕にもあったわけだ。


ここを離れる理由はいろいろありすぎて解らずになっていたから、もう考えることはやめていた。


しかし、やはり僕も男なのだと実感していた。


今の混乱の理由、こんな事になったのは、今日の朝、3年以上も付き合っていた恋人からのメールが原因だったからだ。





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