近すぎて、遠すぎて。
日曜日、あたしは海斗の家の前で10分ほど立ってる。
海斗に待たされてる訳じゃない。
海斗の気持ちを聞きにきた。
でも、インターホンが押せない。
指を出しては引き、
出しては引きの繰り返し。
ガチャ
そんなことしてるとドアが開いた。
「ぎょっ」
びっくりして奇妙な声が出る。
「あら、心ちゃん?」
出てきたのはおばちゃん。
「おばちゃんっ!…どこいくの?」
「パートよ!加代子ちゃん誘って、今日面接くるらしいのよ。」
加代子ちゃんはあたしのお母さん。
………聞いてないっすよ。
「そうなんだ、いってらっしゃい!」
「ありがとねっ。さっ、海斗でしょ?中入って。」
あたしを押して玄関に入れるとドアを閉めて行ってしまった。