近すぎて、遠すぎて。
涙なんて出ない。
泣けない。
心はずたずたで、大泣きしてるのに。
涙は出ない。
『誰が好きになるかよ』
海斗の言葉がこだまする。
「わかってるしっ」
歩く道の上にある石を蹴り飛ばす。
この道、よく海斗と歩いたなぁ。
ふと思い出すのも海斗のこと。
聞かなきゃよかった。
言い方変えればよかった。
あたしが海斗を好きだと言えばよかった。
考えるのは後悔ばかり。
海斗は追いかけてもくれなかった。
あたしをばかなやつだと思ったかな。
自意識過剰って思ったかな。
……そうだよ。
あたしは、そうだったみたい。
「時間戻してぇ」
もう可愛い言葉も出ない。
「心っ!」