近すぎて、遠すぎて。


涙なんて出ない。

泣けない。
心はずたずたで、大泣きしてるのに。
涙は出ない。


『誰が好きになるかよ』
海斗の言葉がこだまする。



「わかってるしっ」



歩く道の上にある石を蹴り飛ばす。

この道、よく海斗と歩いたなぁ。
ふと思い出すのも海斗のこと。


聞かなきゃよかった。
言い方変えればよかった。
あたしが海斗を好きだと言えばよかった。

考えるのは後悔ばかり。

海斗は追いかけてもくれなかった。
あたしをばかなやつだと思ったかな。
自意識過剰って思ったかな。
……そうだよ。
あたしは、そうだったみたい。



「時間戻してぇ」



もう可愛い言葉も出ない。



「心っ!」

< 132 / 200 >

この作品をシェア

pagetop