近すぎて、遠すぎて。
「朝からぎゃーぎゃーうるさい。」
耳を塞ぎながら夢はあたし達に言う。
「俺は、心よりもお前の方が口悪いと思う。」
海斗っ…
だよね。海斗ならわかるよね。
「あ?あたしは高校デビューとか興味ないから。」
化粧してるくせに。
意地張ってさぁ。
「化粧してるくせに。」
「みだしなみって言うんです。」
あたし、最近めんどくさくて、マスカラしかしてないや。
「女って大変だな。なぁ、夏目」
「えっ?あっ!おう…。」
突然の振りに戸惑ってるし。
「心はマスカラだけしかしてないだろ?」
漱石…。
今まで女遊び激しかったの?
女をよく分かってらっしゃる。
「心っ!?」
「なに、海斗。」
「いや、心って…」
漱石を指差しながらそういった。
「心って呼ばせないと漱石って呼ばしてくれないから。」
「それだけっ?」
「あらまぁ。うみと君。なに妬いてっ…はなせっ!」
夢の口を海斗が手で締め付けた。
「おい、黙ろうか。」