近すぎて、遠すぎて。
放課後、あたしは知ることになる。
「聞いた?あの、伊保さんって人、相沢くんと付き合ったらしいよ。」
帰ろうとする人混みに流されていたら、どこからかその会話が聞こえた。
ぱっと足が止まった。
「嘘でしょー。あぁ、でも伊保さん可愛いからお似合いだなぁ。」
心臓がうるさくて周りの声なんか耳に入らないくせに、その会話だけ綺麗に耳に入ってくる。
海斗、オッケーしたんだ。
人の流れと逆に走り、教室へ戻った。
閉めたドアにもたれかかった。
「ははっ……なにそれ…あはっ」
笑ってるのに…
涙が出るのはなんで。
「心…?」
声の先には夢。
後ろのドアから入ったみたい。
「遅いっ!待ってたよ。あたしトイレ行ったのに、まだ帰ってきてなかっ…」
話してる途中なのに、腕を捕まれた。
「なに、そのカラ元気。なんで泣いてんのよ。」
「やっぱり、夢には分かっちゃうなぁ。」
「無理矢理笑う必要ないから。うみとのことでしょ。さっき職員室から帰るとき、一緒に居たの見たから…。」
「かいとだよ…ふぇっ…」
「泣いていいから。」