恋を知りたくて・・・~君と出会ったベンチ~
 それからも何度か歩の家に遊びに行った。
  近藤湊ともそのたび会う。
  毎回思う。やっぱり笑顔が素敵だ。
  でもやっぱり私の中では竜の笑顔が一番だ。
  
  そんなある日いつものように歩の家に遊びに行った。
  いつものように・・・
  「おじゃましま~す」
  今日はなんだか歩があまり笑顔じゃない。
  「どうしたの~?元気ないじゃん」
  歩がお茶を一口飲んだ。
  「ちょっと相談があるんだけど・・・」
  「何??私で良ければ聞くよ!」
  めずらしい。いっつも笑って悩みなんてなさそうなのに。

  でもこの相談…私は聞かない方が良かったのかもしれない。
 
  「あのね・・・私好きな人がいるの。」
  「へ~そうなんだ。」
  「その人のメールアドレス欲しいんだけど・・・話したことないしさ」
  「一目ぼれ??」
  「うん。全然目立つような人じゃないから聞きにくくて・・・。」
  意外だ。歩が一目ぼれ!?
  「で・・・美音・・・聞いてくれないかな?」
  「え・・・?あっ・・・いや~いいけどさ・・・誰?」
  なんか頼みごとをされてびっくりした。
  あまり人からものを頼まれることがない。
  「小林竜って人!」
  え・・・・・・・・。
  竜・・・・?私の顔から一瞬で笑顔が消えたのが自分でもわかった。
  「どうかした?」
  返答に戸惑った・・・。
  「あっ・・・・なんでもない・・・」
  「ねぇ・・・メールアドレス聞いてくれる?」
  嫌だ・・・・。そう言いたかった・・・でも・・・
  「いいよ!聞いておくね。」
  「ありがと~」
  「あっ!!今日用事あったんだ・・・もう帰るね」
  「うん!相談にのってくれてありがとう」
  「じゃあばいばい」
  そう言って歩の家を急ぐようにして走って逃げた。
  
  
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