藍色砂時計









「いや、違うだろ。

 …泣いてる時なんて、誰でも目つき悪ぃって」



  そのちゃら男を、隣のインテリ君がなだめる。


「あは、やっぱ泣いてんじゃん?

 俺、泣いてる女ずたずたにすんの、
 大好きなんだよねぇ……」


  ぽつり、そう呟いて、軽く舌なめずりをする男。
  
  ――いや、知らねーよ。
  てめぇの性癖なんざ。


「こっち来いよ。

 もっと泣かせてやるぜ…?

 ああでも、気持ちよーく、な…」


  軽く私を見下ろしたかと思うと、
  心底楽しそうに私の脇の下に手を入れて強引に立たせる。


「ちょ……っ、やめて下さい!!」


  必死に振り払おうとするのに、やっぱり…
  ちゃら男だろうがなんだろうが、男は男。
 
  力に敵うはずがない…。


「ここでいっか」


  あっという間に暗い、深い茂みに連れていかれた。

  後ろではインテリ君が、特に珍しい状況ではない、とでも言いたげに眼鏡を指で押し上げている。














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