藍色砂時計
「ふぅん、葵、ね…」
口角をにぃっと吊り上げさせた“チヒロ”くんの顔が、異様に近づいてくる。
――私だって、そこまで経験のない女じゃない。
寧ろ、刹那となんて毎日だったから、嫌でも分かる…。
「や…っ!」
首をもげるかと思うほど横に逸らして、その行為を拒む。
「逃げんな」
でも、そんな抵抗も虚しくて。
少しずつ目を伏せるチヒロくんに、私はあっさりと唇を重ねられてしまった。
「ふぇ…」
溜まっていた涙が勢いよく零れる。
目尻から零れた涙は、頬を伝って地面へと吸い込まれていく。
「涙、――……そそる」
唇をゆっくりと離してにたりと笑う。
「くくっ……。
ほんと千尋は、ドSだな…?」
「別に。波瀬には負けるけど」
波瀬。チヒロくんにそう呼ばれている男が、
口元に不敵な笑みを浮かべる。
「いや?
御前につられて俺もSになってるだけだし?」
そう言いながらも、私の服のボタンを外す手は止まらない。
抵抗する、私の手足も止まらない。