恋百物語
それはあまりにも意外すぎる言葉で。
私の脳は一瞬完全に停止したと思う。
「なに、それ。ジョーダン」
「ジョーダンじゃない」
…嘘だ。
そんなの嘘だよ。
だって今朝会ったときだって平野先輩はいつも通りで。
阿部先輩とだって普通に話してたし。
なによりあんなにお似合いなふたりなのに…。
「なん、で」
「わかんない。でも朝練終わった後、平野先輩、阿部先輩に呼びだされて。戻ってきたとき、私、聞いちゃったの」
――ヤバい。…振られた。
「思わず振り返ったら驚いたみたいに笑ってたけど」
平野先輩が、振られたの?
途端、彼の笑顔が頭に浮かび、私は駆けだしていた。