恋百物語
そんなのわかってる。
例えば阿部先輩の気持ちが冷めてしまったのだとすれば、それはどうしようもないことで。
ふたりの恋愛関係に私が口だす権利なんてない。
なにを喚いたって迷惑にしかならないんだって。
わかってるのに…。
「なんで小山が泣くのよ」
「ごめ…っ」
悲しくて。
好きな人がフリーになったんだからチャンスだって言えるかもしれないのに。
私はそんなポジティブには生きられない。
ただ、悲しくて。
「頭、冷やしてくる」
心配そうな須藤ちゃんを振り切り、ひとりで校舎を飛びだした。