恋百物語
なにを考えても、どんな言い訳をしてみても。
私の中にあるのは結局それだけで。
気がついたら口が勝手に動いていた。
平野先輩は口を開けてぽかっと驚いた顔をしている。
先輩でもおどろくことがあるんだな、と少しおかしくなる。
「須藤から聞いた?」
「はい」
「俺、別れたからってすぐに他の子のこと考えられるほど器用じゃないよ」
ごめん、と俯く平野先輩。
ちがう。
そんな顔をさせたかったわけじゃない。
「いいんです。叶わないことくらい、わかってました。それでも今言わなきゃいけない気がしたんです」
「…ごめん」