恋百物語
「おつかれさまでーす」
ジャージに着替えて道場に入る。
普段の練習で袴なんてめったに履かない。
あんな面倒なもの、試合前だけで充分だ。
「おつかれ。小山は今日も元気だな」
「おつかれさまです。平野先輩は今日も眠そうですね」
「さっき体育で走ったから。久々に動くと疲れるよね」
ロッカーから道具をだして準備してると、後ろからポンと頭を叩かれた。
ふにゃりと笑う姿に思わず胸がぎゅっと鳴る。
「やだ。先輩、親父くさい」
だけどそんなの微塵も顔にださずに私は笑う。
可愛いげの欠片もない憎まれ口。
平野先輩はやっぱりふにゃりと笑った。