恋百物語

そしてちらりと私を見た松崎は言ったのだ。




―あ。またかわいい子発見。せっかくだから君もアドレス教えて?






ぶん殴ってやろうかと思った。






君も、ってなんだよ。

ついでかよ。ふざけんな。






私が抱いていた淡い好感は、あの瞬間、粉々に砕け散ったんだ。






「でも須藤ちゃんに会いに来るようになってからはさ?松崎くん、他の女の子に声かけたりしてなかったよ」

「そんなの関係ない。私のタイミングはまちがいなくあの瞬間までだったの」




私の中ではすでに終わったことだった。

そのあとあいつがどうしようと、その事実は変わらない。

今さら好感を持たれたって迷惑だ。






なのに…。






なんでこんなに、胸が痛むんだろう。






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