恋百物語
そこにいたのはまちがいなく彼だった。

授業中に、そっちこそなんでこんなところにいるのかとか、思わず言いかけた言葉を飲み込む。

余計なことを言ってしまえばきっともう素直になれないことはわかっていた。






今しかない。

軽く息を吐いて松崎を見つめる。






「こないだはごめん。どうしてもそれだけ言いたくて」




初めての謝罪。

今までずっとごめんとは言えなかったけど。




「だからってなんで今?」

「…ごめん。窓から松崎が見えたから。なんか居てもたってもいられなくて」

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