恋百物語
「俺、ハイジャン専門だからマラソン向きじゃないのにー」
テツが明るい声で塗り重ねていく優しい嘘。
俺のために。
俺が惨めな気持ちにならないように。
もう充分だ。
「テツ」
「んー?」
「ごめんな」
きっとテツは俺にもう一度跳んでほしいと言いたいんだと思う。
その想いに応えてやれないまま、ただ彼の優しさに甘えてる自分。
充分惨めだ。
「…水くせぇこと言うなよ」
先ほどまで高かったはずのテンションは一気に急降下。
まるで泣きだしそうな声で、テツがぽつりと呟いた。
ごめんな。