寂しがり屋には愛情を。

「うちのバカ、迷惑かけてませんか?」


バカとはおそらく兄の方なんだろうなと頭にそのバカの顔を思い浮かべ、少し苦笑いで尋ねてくる武藤さんに苦笑いを返してしまう。


「教師は、生徒に迷惑かけられる職業ですから。」


迷惑だなんてそんなことないですよーっと口だけいうのは簡単だけど、そんな誤魔化しはどうせすぐバレる。



「でも、あの子は変われますよ。
今は自分に自信が持てなくて、苦しんでいるだけです。」


けど、もう大丈夫。
ゆっくりやって行こうって、決めたもんね。


「のぞみさん…ありがとうございます。
これからも、あいつらのこと見てやってください。」



とても優しい目。
とても優しい笑顔。

その目の先には弟と妹の顔が浮かんでいるんだろう。



「当たり前じゃないですか。
あ、武藤さん、夏樹くんに金髪は校則違反だってこと教えてやってくださいね。」


ニヤッと笑うと、申し訳なさそうに顔を緩ませる武藤さん。



「帰ったら、よーく言って聞かせます。」


髪の色なんかで自分を守ろうとしなくていいってこと、わかってくれるといいな。















< 192 / 258 >

この作品をシェア

pagetop