初めての恋の甘い誘惑~レンタル彼氏は学園王子~
しばらく彼は泣いている私の隣で、ただ黙ってジッとしていた。
私が顔を上げてそっと彼を見ると、
哀しそうにふわりと笑った。
「あれ、…乗るか?」
結城くんが指差す先には夜空に浮かぶ観覧車があった。
……綺麗。
「乗る」
涙を拭ってそう言うと彼はまた、私の手をしっかりと繋いで
「よし、行くぞ」
と言って歩き出した。
それからしばらくはお互いに話す事もせずに歩いていた。
ただ、そこにあるのは彼の手のひらのぬくもりだけ。
だけど、言葉のないこの時間の方が、結城くんをより感じられる気がした。