サクラドロップス

「・・・ったく、なぁにがイッテキマスよ」



いつもより2本、電車の時間を遅らせたら、何とシートに座れてしまった。

アタシは満員電車・・・と、言うか、人ごみが苦手で、いつもはやめに部屋を出るのだけど、遅く出るという手もあった訳だ。


出かけに持たされたお弁当を膝の上にのせると

置いた場所が、ジンワリと暖かくなった。

それが何だかこそばゆくて、思わず自分に憎まれ口。



『はい!お弁当。ホントは冷めてからの方がイイみたいだけど、冬だし、大丈夫だよね?』

あまりにも『彼』の様子が普通だったから、アタシも当たり前みたいに

『ありがとう』

なんて、言っちゃってさ。

『いってらっしゃい。気をつけてね』

と言って、嬉しそうに手を振る『彼』に

『いってきまーす』

なんて・・・笑顔返しちゃって・・・ねぇ?


「なぁんで言っちゃったの?アタシどっかオカシくなったのかな」


見ず知らずの、得体の知れないオトコノコを

どうして、今朝の内に追い出さなかったんだろう?


「・・・・・・」




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