サクラドロップス
「ユキさん、ちょっと」

手洗いとうがいを済ませてから、ぼんやりとリビングを眺めていたアタシのコトを、ツバサくんが呼んだ。

「・・・?」

サクラを抱いてキッチンに行くと・・・


ツバサくんが、ボールに卵を割りいれていた。


「そろそろ教えとく。粗雑なユキさんでも失敗しない『コツ』」


と、言って、クスクスと笑う。

けれど・・・

「知りたくない」

アタシは、笑えないの。

「どーして。ユキさんボクの作る玉子焼きスキでしょ?聞いといてよ。将来子供に焼いてあげられるようにサ」

「聞きたくない」

アタシは、笑えないの・・・

「ユキさん?」

「聞かない。聞きたくない。アタシが作れなくてもイイ。ツバサくんが、ツバサくんがアタシの為に玉子焼きを焼いて。子供なんてイラナイ。欲しくないから・・・」

アタシはサクラを床に下ろすと、自由になった両手でツバサくんの背中にすがりついた。


ねぇ、知らなかったけど・・・

靴を脱ぐとアタシより、少しだけ背が高かったんだね

華奢なのに、意外に肩幅、あったんだね


ねぇ

ツバサくん

アタシ、まだまだアナタに、甘え足りないの・・・


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