サクラドロップス
毎日会社に行くのに使う電車を途中で乗り換えて
アタシはいつも電車の窓から眺めていたあの場所へと向かっていた。
乗り換えた駅から13分
2つ先の駅で電車を降りる。
駅から続くなだらかな坂道は、遅刻しそうな時は少し辛いけれど
アタシはいつも『彼』に起こしてもらっていたから、めったにココを走って上がることはなかった。
高台まで続く坂道の両側には
満開になり狂おしいほどに美しい姿を見せ付ける桜の老木が並んでいる。
「・・・・・・」
アタシは息を整えて、肩から提げるキャリーバッグを反対の腕に持ちかえると
もう一息と自分に言い聞かせて
痛む足を無理にはやく動かしながら、あの場所・・・
そう、アタシ達が通った高校の校庭を、めざした。