サクラドロップス
坂道を急ぐアタシのほてった肌を
やわらかい春の風が、白い花びらを遊ばせながら撫でていく。
その風はまるで彼の優しさのようで
アタシの鼓動は、身体の仕組みとは別の意味でもトクトクと速くなる。
少しだけカーブした坂を上がりきり
キャリーバッグを両手に持つと
アタシは一度目を閉じ、大きく息を吸ってから、ゆっくりと視線を上げ、瞼を開く。
校庭には学校全体を囲むように、等間隔に植えられている満開の桜。
10年前にひゃあひゃあと、か細い声で鳴いていたサクラが捨てられていたのは、この桜の木の下だ。
春休み
風が吹くと少し埃っぽいグラウンドの向こうで
打ち合いの練習をするテニス部の声。
ふわりと
風が吹けば
サラサラと雪のように
舞い散る
サクラの花びら 花びら
そして・・・・・・