サクラドロップス
「ええ。昨日はかなりハイペースで呑んでたみたいだったから・・・でも、無駄な心配でした。思ったよりスッキリした顔してる。さっき機嫌の悪いって言ったの、冗談ですから。それ、今飲みたくなかったら、昼にでも飲んで下さい」
と、言って、安藤はニコっと笑った。
笑うと、安藤はカワイイ。邪気のない笑顔が、実家の柴ワンコに似ている。
「・・・アリガト」
アタシはペットボトルを軽く上げると、少しだけ笑って見せた。
すると安藤は、今度は口を大きく開けて、ニカッと笑うと。
「やった!ユキさんに笑いかけてもらえた!朝からついてる!!」
と、言って、大袈裟にガッツポーズ。
そして。
「あーんどお、なーにユキ姉さん口説いてんだ?オマエみたいな半人前、十年経っても振り向いてもらえないぞ?さっさと資料揃えて営業周り行ってこい!」
と、課長に怒られる。
なのに、全然懲りないこのオトコは。
「やっべ!見られてたか!すみませーん、安藤仕事しまーす!!でも課長!十年もかからず落としてみせまーす!!」
とか言っている。
「ばーか。はやく準備しなさい」
アタシは苦笑いして、今度こそ安藤の背中を押して、給湯室を後にした。