サクラドロップス
「しかし墨田家は女系なのかしらねぇ」
仕出のお弁当を食べながら、寂しそうに母が呟いた。
「お父さんは病気で、ツキ兄は事故でしょ?関係ないじゃん」
肘をついてテレビを見ながら、アユミ。
「アユミ、行儀悪いよ」
と、アタシ。
「やだユキ姉、ツキ兄みたいなこと言わないでよ」
クスクスと笑いながら、アユミ。
「・・・そんなこと言われても、覚えてないし」
「あんなに仲が良かったのにネ。んー、でも、仲が良かったからか。ツキ兄カッコよくて、あたしだいすきだったのに、でも、やっぱ双子だからなのかな・・・ツキ兄とユキ姉の間には入れない気がして・・・あたし、時々寂しかったな」
昆布の煮物をつつきながら、アユミ。
「ツキ、ねぇ・・・本当にやさしい子で。こんな風にみんなでゴハン食べたあとにさ、よく、お母さんの肩揉んでくれて。どこ歩いても『ツキくんは良い子ですねぇ』って声かけられて・・・お母さん、嬉しかったな」
「ああ、あたしも言われた!学校の友達にもさ、ユミちゃんのお兄ちゃん、テレビに出てる人よりカッコイイって。ウチに遊びにくる友達にもツキ兄やさしくてさ、あたしもいつも、自慢だった」
お母さんの話に、アユミが食いつく。
アタシは、テレビのボリュームを上げる。
つまんない、日曜日のバラエティ。