サクラドロップス

「ツキ兄ってば若いのにやたら植木にも詳しくてサ」

「ああ、よく庭の手入れしてくれてたわよねぇ」

「うんうん、菖蒲とかグラジオラスとかも、咲かすの上手でさ。あたし、季節の花を学校に持っていくの、楽しみだったなぁ」

いつもの2人の会話。

ホントにね『ツキ』

アナタが生きていれば良かったのにネ。

アタシはアナタと違って出来たヒトじゃないから、2人を幸せに出来ないみたい。


「それに料理も上手でね、お母さん、助かってた」

「ああ!ね、そう言えばさ、ツキ兄の玉子焼き!!美味しかったよねぇ?お母さんのとサ、なんか違うの。固くないの」


仕出弁当の中の玉子焼きを口に入れながら、アユミ。

「うん、こんなのよりツキ兄の玉子焼きの方が美味しかった」

「あれはお母さんにも謎だったのよ。出汁と玉子のバランスがとか混ぜ方がとか言ってた気がするんだけどねぇ」


玉子焼きなんてみんな一緒じゃない。

そんな風に思いながら、アタシも玉子焼きを口に入れた。

・・・確かに・・・大して美味しくないケド。


「ツキ兄のはさ、もっとこう、ふわっふわで、口の中でやわくとろけるようなさぁ・・・ねぇ、ユキ姉?ツキ兄の玉子焼きも覚えてないの?ユキ姉、すきだったよネ?」


と、アユミ。


アタシは、そんなの覚えてないわよ・・・と、言おうと・・・


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