サクラドロップス

「・・・びっくりした」

「うん、ゴメン。なんか・・・」


実家の、玄関先で。

キャウキャウとうるさいアンコを足でじゃらしながら、アタシ。

母は午後に来た親戚の話し相手をしている為、お見送りはなし。


「でも、良かった。ユキ姉が、ツキ兄のこと思い出して。この前はツキ兄の存在すら知らないみたいな顔してたしさ。最近疲れてんのかなって・・・実はちょっと、心配してたんだ」

軽く舌を出して見せるアユミ。

「ありがと。もう大丈夫」

ウソ。

でも、大丈夫なふりをする。

少しずつ少しずつ、ウソをホントに、していけるように。


「ネ、そう言えばさ、例のストーカーって、どうなったの?」


んー、と、伸びをしながら、アユミ。

アタシは笑って。

「ん?天使だったみたいよ?」

と、言って、舌を出して見せた。

「は?ユキ姉どうしたの?ドリーム入ってるよ」

怪訝な顔をするアユミに『今度靴買ってアゲルね』と言って、アタシは玄関を後にする。

親戚の人たちは『久しぶりなんだから』とアタシを引きとめたけど

アタシには帰ってやることがあるんだから。


窓を開けて空気の入れ替えをして、パキラをベランダに出して・・・ああ、でも、まずは帰りに、サクラの爪磨きを買って帰らなきゃ。


庭の桜の花から、ひらりと、舞う、花びら・・・


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