サクラドロップス

そして、翌日。

アタシはいつものように髪をアップにして、いつもの時間の電車に乗り、窓の外の景色を見ながら会社に向かった。

もちろん朝起きたら空気の入れ替えをして、サクラに『パキラとお留守番していてネ?』の、キスをすませてから。

昨夜はまんまとたくさん泣いてしまったから、朝から『ツバサくん』のような手作りのお弁当は無理だけど・・・

でも、それでも

少しずつでも、イツキが思い出させてくれた生活を続けていきたいと思う。


出かける時に、ふと玄関から部屋を見てみたら

イツキが作ったアタシの部屋は、実家の茶の間の雰囲気によく似ていて

アタシは、朝から少しだけ泣いた。


イツキはアタシが留守の間、料理や掃除をしながら、何を考えていたのだろうか。


アタシたちが過ごした、あの家のこと、思い出したりしたのかな

帰りたくても帰れない、あの家のことを。



窓の外 遠くで散りはじめた桜の古木が、ユラリと、滲んだ------


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