サクラドロップス
「イエ、オレも飲みたかったんです。あ、もうすぐですから」
給湯室から、安藤の声。心なしか、楽しそうに聞こえる。
「ユキさん、お待たせしました。どうぞ、粗茶ですケド」
「・・・確かに」
会社のやっすいティーバッグだからネ。
「ありがとう。イタダキマス」
「どうぞどうぞ、あ、隣、イイですか?」
「・・・もともとアンタの席でしょうよ」
「あ、それもそうですよネ。はは、やべぇ、緊張してる、オレ」
そう言って、アタシから顔をそらす安藤。
アタシはキーボードを叩く手を止めて、湯のみを両手で持って首を傾げる。
すると安藤は、はあ・・・と、大きく深呼吸すると、立ち上がって・・・
「この前は、ほんとにスミマセンでした。ユキさんが気を使ってくれたから、金曜の朝、会話の流れで済ましちゃいましたけど・・・ちゃんと、謝りたかったんです。強引な真似して、ゴメンナサイ」
と、言って、頭を下げた。
アタシは驚いて、湯飲みを机に戻すと。
「ちょっ、安藤ヤメテよ、もうイイってば」
と、言って、軽く安藤の腕を叩く。