サクラドロップス

「と、言う訳で、これからも勝手にすきでいるのだけは許してください。で・・・ユキさん」

「・・・はい」

まっすぐな瞳で見つめられて、アタシは思わず素直に返事をしてしまう。

すると安藤は、クスッと笑うと。


「ここから先は、説教です」

と、言った。

「あ、データー入力、しながらでイイですよ?サクラちゃん、待ってるし。オレ、勝手に話してますから」


それじゃあ、お説教にならないんじゃないかしら。

そんな風に思いつつも、アタシは安藤の言うようにキーボードを打ち始める。

すると安藤は・・・


「あ、迷うことなくキーボード打ちましたネ?いーです、ユキさんらしーです。でも、あまり無理はしないで下さい。また、抱きしめたくなりますから」


と、言って、自分とアタシの湯飲みを持って、給湯室に消えた。

「・・・・・・」

アタシは言葉が出てこない。

だって安藤・・・どこまで、本気なのよ?


「もっとも、オレに抱きしめられたい場合は、どんどん無理しちゃってもらってオッケーです。ムシロ、無理して下さい。離しませんから」

給湯室から、安藤の声。

湯飲みを洗っているらしく、シンクに飛び散る水の音に消されないように、気持ち大きな声で。


< 212 / 254 >

この作品をシェア

pagetop